待ち伏せ

wotaku

俺マン2017

今年刊行されたやつで良かったやつを決めるやつです。今年は本編のみ、12作品です。

f:id:summatz:20171231054948j:plain

 

ルポルタージュ』/売野機子 

 

 

 今年話題に上がることの多かった『ルポルタージュ』、色々と思うところはあるんですけどとりあえず続きが読めるようなのでほっとした。

ルポルタージュ』は売野作品のなかでも極めて特別だと思っていて、今まで「普通の社会のなかで取り残された、どこか欠けた人たちの真っ当な愛」みたいなものを描き続けていたのが、今作ではその「真っ当な愛」そのものに疑問を投げかけたという点で売野先生にとってはエポックとなる可能性があるんですよね。

そういう意味でも入れ子というか、この作品自体が「愛」というもののルポ漫画になってるんだと思う。

 3巻まで読んだら棚ぼたどころではなくなっていた。

 

売野機子のハートビート』/売野機子 

 その年に出た売野作品は漏らさず年間ベストに挙げるという慣例がある。

 

f:id:summatz:20171231050756j:plain

す、好きすぎる…

 

『我らコンタクティ』/森田るい 

我らコンタクティ (アフタヌーンKC)

我らコンタクティ (アフタヌーンKC)

 

 ロマン極振り系単巻完結漫画のニューフェイス

西村ツチカ・真造圭伍・市川春子ふみふみこあたりの80年代ニューウェーブフォロワーのさらにその下のフォロワーみたいな印象で、絵は最高なんだけどストーリーの組み立てがちょっと微妙かな、という気もした。梨穂子さんの話とかお兄ちゃんの話とかロケット打ち上げの障害となる警察とか、展開が早いので雑、に見えてしまう。1話にしか出てこなかった社長も完全に空気だしね。

でもそれを吹き飛ばすだけのカタルシスがあってマージで最高。作者の巻末コメントで2度泣いた。

 

『シンギュラリティは雲をつかむ』/園田俊樹  

シンギュラリティは雲をつかむ(1) (アフタヌーンKC)

シンギュラリティは雲をつかむ(1) (アフタヌーンKC)

 

学校で周りから疎まれる天才少年、見たこともないメカとの邂逅、そのメカを操る目的はごく単純で個人的な欲望、他人からの称賛が欲しいという叫び、「シンギュラリティ 発進」、という完璧すぎる1話を読んだときから単行本化を待ってた。

作者が「アフタファンによるアフタファンのための漫画」と言ってるようなのに最近話をたたみ始めてるように見えて心配。これが売れないのどうかしてんだろ。どうなってんだ。

  

『ブルーピリオド』/ 山口つばさ

ブルーピリオド(1) (アフタヌーンKC)

ブルーピリオド(1) (アフタヌーンKC)

 

 

 

 ブルピリも1話からダントツで思白かった。

 美大受験のための技術指南漫画であり、美大受験のための心の支え的漫画でもあり、もちろんDQNが芸術の道を目指すという王道漫画でもある。

 ここらへんの群像劇的側面がある点もポイント高くて、全人類に当たり判定があるんですよ。

今年はアフタヌーンがマジで面白くて、さらに来年からは石黒先生の連載が始まるときたら、もうね。ヤバイです。

 これは煽りじゃない本心です。

  

 『四ツ谷十三式新世界遭難実験』/有馬慎太郎 

四ツ谷十三式新世界遭難実験 1 (BLADE COMICS)

四ツ谷十三式新世界遭難実験 1 (BLADE COMICS)

 

レベルE

異世界デタラメキモ・モンスターのキモ・生態が楽しすぎるので第三者の陰謀とか敵キャラクターとかそういうのは出さずにもう一生この世界観でやっててほしいやつ。ブラコンの妹が可愛い。

 

『雑草家族』/小路啓之 

雑草家族 (ヤングジャンプコミックス)

雑草家族 (ヤングジャンプコミックス)

 

 小路先生が亡くなられたことによる損失、めちゃくちゃデカい。これは青山景の『よいこの黙示録』のときもそうだったけど、未完でも許せるくらいに面白いというのはほんとにすごいし、そういう作品こそ本物なんじゃないかとさえ思ってしまう。嘘です。未完を許せるわけはない。

同じく遺作となった『10歳かあさん』も変態的で不器用に生きるキャラと、歪んだ関係性の中に生まれる愛、みたいな小路作品の魅力が詰まってる唯一無二の作品だと思う。

 

『魔女と野獣』/佐竹 幸典

魔女と野獣(1) (ヤンマガKCスペシャル)

魔女と野獣(1) (ヤンマガKCスペシャル)

 

復讐に生きる口の悪い女が過度な暴力を振るう最高コミック。顔が良くて口の悪い女の暴力ほど好きなものないな。「魔響教団」というネーミングが微妙にダサい気がしなくもないけどこの先も色んなバディが出てくるとアツイ。

とにかく絵がめためたに上手くて、戦闘シーンで枠線をデコったりしてるところを見ると描いてるうちにノってきたんだろうな~というのが伝わってきて良い。

f:id:summatz:20171231031531j:plain

f:id:summatz:20171231031536j:plain

f:id:summatz:20171231031542j:plain

あと表紙もめちゃくちゃに良いですね。

 

『星と旅する』/石沢庸介 

星と旅する(1) (講談社コミックス月刊マガジン)

星と旅する(1) (講談社コミックス月刊マガジン)

 

 人が居住区としての星を所有している世界という設定がすごい面白い。家として、また自分の領地としての機能を果たす星をDIYで改造していくというストーリーが持つシミュレーションゲーム的な楽しさ。加えて星に乗って旅を続けていくことのワクワク感。キャンピングカーの規模がクソデカい版って考えたらクソワクワクしないですか。

冒険ものにおける「帰るべき場所」って重要な要素だと思ってて。それに対して、家(星)ごと旅していくっていうストーリーは新しいのでは!?、旅を重ねることでその「帰るべき場所」がどんどん改造されていって自分だけの桃源郷になったらさらに楽しいのでは!?!?という発想。天才では。

あと表紙もめちゃくちゃに良いですね。

 

 『麻衣の虫ぐらし』/雨がっぱ少女群

麻衣の虫ぐらし 1 (バンブーコミックス)

麻衣の虫ぐらし 1 (バンブーコミックス)

 

 顔の良い無職女とそれを甘やかす農家の女の田舎暮らしを描いた最高コミック。絵がめちゃめちゃに上手いホラーロリエロ漫画家が百合と虫を描くとこうなる。絵がめちゃめちゃに上手いホラーロリエロ漫画家はふつう百合と虫を描かないと思うけど。

日常描写だけでなく、菜々子のおじいちゃんのエピソードを入れたことで他の命と生きること、虫と共生することというストーリーが説得力を持つようになったな~と思った。

f:id:summatz:20171231040529p:plain

この裏話クソ笑った。

あと表紙の菜々子が麻衣に向ける””まなざし””もめちゃくちゃ良いですね!!!!!女が女に向ける””まなざし””が好き!!!!

  

『オッドマン11』/道満晴明 

オッドマン11 (メガストアコミックス)

オッドマン11 (メガストアコミックス)

 

『スーサイドパラべラム』が掲載誌であるメフィストの電子版完全移行に伴って(?)完結したのが去年の12月とかで、今年単行本出ると良いな~と思ってたらこっちのほうが先に出た。道満作品は単行本として読めるだけで嬉しいというのがある。

人間の女が人外の女に総攻めされるだけのお話。ちなみに僕の推しオッドマンはNo.9「不潔(ペスト)」の異名をもつ不条先輩です。

f:id:summatz:20171229021039j:plain

輪入道」は体位の名称ではない。

 

『北極百貨店のコンシェルジュさん』/西村ツチカ

北極百貨店のコンシェルジュさん 1 (ビッグコミックススペシャル)

北極百貨店のコンシェルジュさん 1 (ビッグコミックススペシャル)

 

  The world's cutest  comic.

 

百貨店の店員側が人間でお客さんが動物、という設定は一見逆なのでは?とも思うんだけど、これはツチカ先生のお家芸である「不思議の国のアリス理論」の転換なんだよな。だからこそ今までになくcuteで嫌味のない漫画になってる。世界一可愛い。