俺マン2023
2023年刊行で良かったマンガです。
なんかTwitterのノリが悪くて前みたいにツイートのリンク埋め込みできなくなったからところどころスクショをそのまま貼ったりしている。
下の方に良かった読み切りも載せてます。
- 『インターネット・ラヴ!』/売野機子
- 『神田ごくら町職人ばなし』/坂上暁仁
- 『カデギ 物流倉庫でミックスコーヒーをがぶ飲みしながら働いた話』/イ・ジョンチョル 著 印 イェニ 翻訳 首藤 若菜 解説
- 『ローラ・ディーンにふりまわされてる』/マリコ・タマキ 作、ローズマリー・ヴァレロ・オコーネル画、三辺 律子 訳
- 『ダイヤモンドの功罪』/平井大橋
- 『フツーと化け物』/羽流木はない 原作、篠月しのぶ 漫画
- 『いやはや熱海くん』/田沼朝
- 『放課後ひみつクラブ』/福島鉄平
- 『ネコと海の彼方』/漫画 星期一回收日、原作 陳巧蓉
- 『いつか死ぬなら絵を売ってから』/ぱらり
- 『下北沢バックヤードストーリー』/西尾雄太
- 『だんドーン』/泰三子
- 良かった読み切り
『インターネット・ラヴ!』/売野機子
『ルポルタージュ』が打ち切りになり、移籍版が刊行されるタイミングで売野先生はこう語っていた。
「恋がなくても幸せになれる時代で、それでもふたりになるのは何故なのか、私にはまだわからないけれど、まだ愛や永遠を信じてる私や、それは無いとも知っている私が、聖の運命を見届けたくて描く新章です。」
最新作も間違いなくこの流れにあると思っています。
世界から透明化されるクィア(バイセク)という存在、そういう"属性"を超えてひとりの人間として画面の向こうから見つけてくれる存在。「世界の優しさ」を信じるような売野漫画が好きなんだよ。
ウノくんが天馬を待った1ヶ月、天馬が自分自身の存在・輪郭を初めて知っていくシークエンスでボロボロ泣いてしまった。カプの片方がもう片方の真似事を自覚的にして、それで自分という人間が形作られるのが美しい。あとコミコミスタジオ特典描き下ろしでは天馬がウノくんの"モーニングルーティン"の一部になっている未来が描かれていて、また泣く。
一方で、「作品の世界観のリファレンスを、人から見えている・現実世界に生きる自分にするという試み」をしたことがこれまでの作品群との違いだとインタビューでも話しているのだけど、売野先生自身が持つ都会感が本当に大好きなのでここもすごく嬉しくなった。この記事を書くためにFavologに登録済みの売野機子アカウントのツイート群を2〜3時間かけて全部遡ったんだけど(キモ)好きなツイートがありすぎて、でもここにスクショを貼るのは辞めておきます。天馬に負けない、10年来の売野ツイートラヴァーで良かったと思った。俺こそがインターネット・ラヴ!だという気持ちを込めて……
『神田ごくら町職人ばなし』/坂上暁仁
職人技YouTube動画みたいなずっと見ていられる心地よさ、だけでなく人情話的な作りも良すぎる。
以前コミティアで買った『火消しの鳶』も激ヤバ筆致だったのでどこかで読んでくれ。
同じトーチWebでは『まめで四角でやわらかで』という真逆筆致江戸漫画(こっちは高野文子的な描線の気持ちよさがある)の掲載もあってトーチの江戸がアツかった。
『カデギ 物流倉庫でミックスコーヒーをがぶ飲みしながら働いた話』/イ・ジョンチョル 著 印 イェニ 翻訳 首藤 若菜 解説
この漫画が描かれているのは数年前の韓国とのことだけど2023年の日本でも、物流周りの深刻さは当時より一層厳しくなっている。
物流倉庫で働いていた作者の実体験を元にした作品ではあるが、単なるコミックエッセイではなく、かといって問題を情に訴えかける社会派漫画でも無い。辛い労働環境を感情的に描こうと思えばいくらでも出来るんだろうが、カデギという現場に対して適度な温度感を持って描いているように感じる。これは作者の狙ったところっぽくて良い。逆にそのテンション感は、PC・スマホ画面のクリックひとつでモノを買ってしまう「消費者としての私」にジワジワと訴えかけてくるものがある。
韓国(特にソウル)は競争が激しい社会であることが知られているが、日本(の東京)もまた同じで、現代社会で働く「労働者としての私」という面にも刺さる描写がある。ソウルで生き抜く主人公の同士的キャラクターの女性が出てくるんだけど、これがロマンスにならないのも好きなポイントだった(韓国の若者はフィクションのラブロマンスに飽きているという風潮もあるらしく、それを汲んだもの?)。
物流にも関わる仕事に就いている自分が2024年問題を目前にして読む漫画として意味があったな〜と思う。なんか今さら馬鹿らしいと思うかもしれないけど…再配達減らしたりとか…コンビニでおにぎり手前取りするとかも回り回って誰かを助かることになるから…各々がやれることをやっていこうね…。自分はというとブラックフライデーに加担して電書用タブレットを購入しました。これは必需品なので……
『ローラ・ディーンにふりまわされてる』/マリコ・タマキ 作、ローズマリー・ヴァレロ・オコーネル画、三辺 律子 訳
「ポリアモリー気味のチャラ女に捨てられたり復縁したりを繰り返す都合のいい主人公女、その様子を一番近くで見ていた親友が自分の恋愛も粗末に扱ってしまうやつ」ほど好きなものがない。自分の恋愛と人の恋愛を比べてしまうティーンよ…………
ローラ・ディーンに口説かれたのを(おそらく)きっかけとして「ストロベリーの香りが好き」とか言っちゃうようなフレディなんですが、表紙だけでなく本編もその甘さを表したようなピンクとの2色刷りで良いんですよね。
でもこの2色刷りが一番効果的に使われるシーンがここなの、最悪なんですよね。
レズビアンへの激アツ偏見シーンとか、激アツジャップオタクdisシーンとかも豊富でイイ感じです。
『ダイヤモンドの功罪』/平井大橋
夏の甲子園で綾瀬川次郎レイドバトル、絶対見てえ〜(1回戦:瀬田高校、2回戦:奈津緒高校、3回戦:椿高校、決勝:円桃吾高校)
これまでの読切(とインタビュー)を見る限り、そもそもは野球という題材が好きでいろいろお話が作れて、その中でも"少年の天才性"を描くのにめちゃくちゃ適していたということなのかな。
「同じ題材で切り口を変えたネタがいくつもある」作家だと、今年読んだ中では『宇宙の音楽』、『ホルンは後ろに鳴く』の山本誠志も良かった。『宇宙の音楽』最終巻のあとがきでも「次作も吹奏楽を描く」と宣言しているので、この人も吹奏楽部ネタで無限にエピソードを描き続けられるタイプなのかもしれない。
となジャンアプリだと上手く検索できなくなってる上に読切の時系列忘れがちなので自分用メモ
「可視光線」
「サインミス」
[10Pショート読切] サインミス - 平井大橋 | となりのヤングジャンプ
「ゴーストライト」
[野球漫画賞 佳作]「ゴーストライト」 平井大橋 - 週刊ヤングジャンプ編集部 | となりのヤングジャンプ
「ゴーストバッター」
[野球漫画賞 佳作]「ゴーストバッター」 平井大橋 - 週刊ヤングジャンプ編集部 | となりのヤングジャンプ
『フツーと化け物』/羽流木はない 原作、篠月しのぶ 漫画
捕食者と獲物の異種族交流百合!!!
両片思い(?)から利害が一致する関係性になる瞬間がアツい。
一方でタイトル通り、「フツーの人間と化け物みたいな人間」についてもかなり真面目に取り組んでる。本作の「人間界に紛れるためにフツーの人間の振りをしている化け物」の対比として、「人間の身体性が嫌になっておばけ(キモキャラ)のガワを被る人間」のお話が読める『みっちゃんの皮膚』も良かったです(2024年)。というか最近はこういう類型の漫画よく見る気がする。
『いやはや熱海くん』/田沼朝
スローテンポの会話が心地いい。ひとつひとつの細かい言動からキャラクターの人物像を作り出していく手腕がある漫画家だ。辻くんの「髪切った次の日に人に会うのが嫌いやねん」とか大理解り(だいわかり)。小1の時に髪切った次の日学校行きたくなさすぎて泣いて遅刻していったナチュラルボーン自意識過剰ボーイだったので。
『スキップとローファー』に代表されるリベラルな付き合い方を内面化した高校生漫画に分類される感じ。なんだけど、熱海くん自身は絶妙な空気読めなさで他者に取り入っていく(7話での足立さんの恋路に対する余計な気遣いとか)のでいやはや熱海くん……となる(タイトル回収)。それ自体が作品の抜け感にもなっているが。
『放課後ひみつクラブ』/福島鉄平
最近(要出典)若手で(要出典)流行りの(要出典)、「狂気をはらんだボケと、テンション低めなツッコミのワードセンスで笑わせるタイプ」の漫才っぽい気がする(要出典)。ここら辺、お笑いのオタクに解説して欲しい。
あと視線誘導がバキバキにキマっててもはや視線誘導のパターンカタログみたいになってるのもすごい。
『ネコと海の彼方』/漫画 星期一回收日
、原作 陳巧蓉
幼馴染喪失からの告白百合という建て付けに差し込まれる、死んじゃった友達の名前をカッターで手首に掘る女がヤバい。
「作品だけでもこの世に残しておかないとその人としての存在が消えてしまう」という思い込みを、自分も創作活動の中に身を置くことで「作者の本当の感情までは理解できない(=作品は作者のもの)」という考えに昇華していく。その克服シーンが、死んでしまった友達と夢の中でネコ語(本当の気持ちを隠したコミュニケーション)を交わす絵で描かれるのが凄い。これも"Life goes on"的な物語だ。
星期一回収日さん、『綺譚花物語』と比較すると今作は黒い画面が特に印象に残る。
『いつか死ぬなら絵を売ってから』/ぱらり
不器用すぎる男2人のパトロンな関係性が好きなオタクは読め。人間そのものではなく才能に目が行ってしまう、お互いの力を必要とする運命力等、魅力的な部分が詰まってて最高だ。
活動停滞中おじ画家が、不器用な若い男同士のアオハルにあてられてるシーン可愛い。
『下北沢バックヤードストーリー』/西尾雄太
無意識の加虐性みたいなものに自覚的に向き合っていくお話、一歩間違えれば自分も同じようなおじさん化していたかもというifに寒気が走る。
あるいは「自分が死んだ時は保険金に頼るのではなく蔵書を高く売って金にしてくれ。売り先はBOOKOFF以外で」と家族に伝えるタイプのオタクをやっているので、そこに何の違いもありゃしねぇのかもしれない。
この記事を書いている途中で年を越し、最終巻も発売されたけど、古着というモチーフに掛けた「袖振り合うも多生の縁」的ラストに着地するのも良かった。西尾先生初の男性主人公漫画がこういう面白さになるとは思ってなかったな。ウオーーー自分も対面コミュニケーションをちゃんとやるぞ!!という気持ちに……。
余談にはなるけど、2023年は西尾先生に会えて直接ファンですと言えたのも嬉しかった。ディスコ元年にも感謝。
『だんドーン』/泰三子
川路利良を見てると「泰三子先生って、人心掌握を生業とする天然たらしキャラを描きたすぎるのかも(ex.源誠二)」と思って面白くなる。斉彬の「咲ける場所は人それぞれ」というセリフで泣いちゃうんだけど、歴史上の人物を漫画に登場させるにあたってのキャラ付けが魅力的であることも示しているよう。
ハコヅメに一旦区切りを付けたことや、かと思えば新連載3話目でド下ネタ回を入れてこれたり、とにかくモーニングに好きに描かせてもらってるんだな〜という印象。
敵方の破滅女(文字通り全てを破滅させられる)が出てきて狂わないわけがない。
良かった読み切り
順不同、一言感想。
友人について| 特別読切|ヤンジャン!|集英社公式・ジャンプ系青年マンガ誌アプリ
10ページとは思えない。じ、人生……
METATALK 読切 - 無料コミック ComicWalker
中島佑無双。「女性に男の内輪ノリを見せつけることで悦に入るきもいやつやっちゃいそう」で笑っちゃった。インターネットでくだ巻いてる全ての人間へ。
全編が自由律俳句のような。コミティア発表作等もまとめて早く一冊の短編集にして欲しい!
走り出す花びら / 走り出す花びら - 甘井最鹿 | FEEL web|マンガの数だけ愛がある
サビの見開き家具組み立てページがグッと来る。家具を揃える=新生活を送る上での最低限の準備 が「新しい自分になっていく」ことに繋がっていて50p一気に読ませるのがすごい。でもフィーヤンぽくは…無い?どうなんだろう。
遠い日の陽 - 横谷加奈子 / 【コミックDAYS読み切り】遠い日の陽 | コミックDAYS
良すぎるでしょ。
[下校オニ]せがわひろわき - 曽山一寿賞 | 週刊コロコロコミック
超良いネタなんだけど、なんでわざわざ曽山一寿賞(しかもレギュレーションがある)に応募しようと思ったんだ!?
オムファタール…になるのか?学生が卒制で描く漫画では無い。
第92回 青年部門 大賞「メダカの学校」福岡ゆい(21歳・東京都)|小学館 新人コミック大賞
こういう群像劇が好きだ。理数系の厨二病(ちくちく言葉?)がいても良いだろ。
ネギのゆくえ - 山吹 / 【コミックDAYS読み切り】ネギのゆくえ | コミックDAYS
いま連載してる『こどもどろぼう』はあんまオモロくない。
[特別読切] もっとヒーローになりたい - 白井もも吉 | となりのヤングジャンプ
白井もも吉〜〜〜〜♡
霊宝無量! 仙人ガール / 霊宝無量! 仙人ガール - おきらくボーイ | サンデーうぇぶり
おきボ〜〜〜〜〜〜♡コメント500近く付いててバケモン。
雛猫 - 空次郎 / 【コミックDAYS読み切り】雛猫 | コミックDAYS
コミティアで2万回は見たことある漫画〜!と思ったら初出コミティアだった。
フライドフィッシュは飛ぶフィッシュ - 蛍田鉱山 / 【コミックDAYS読み切り】フライドフィッシュは飛ぶフィッシュ | コミックDAYS
panpanya、ネルノダイスキ、つのさめ、あたりの流れにあるような画。ドラマチックでおとぼけ。
『26ページでわかる!やさしい喫茶勉強法』/不死デスク(ハルタ2023-APRIL volume103)
独白の面白さと画面の面白さの両輪で読ませていくセンス人(びと)にしか描けない漫画。飲食店の席でメニューの長短を合わせ座りを良くしてパーソナルスペースを整えるやつ、俺もやりがちなのですごい分かる。
あとはmy new gearタブレットで2023年のビッグタイトル『出会って4光年で合体』を読了すれば気持ちよく年を越せる気がする。(およそ半分くらいまで読んでから、スマホの小こい画面で読む漫画では無いと気付いた)。